Serendipita' ! -すばらしい夜、つづいてく日々

人生には、思い描いていた以上の日々が訪れる・・ そんな思いをつづった日記が、ここにあります。 http://lavitaasti.exblog.jp/21306655/

大好きな友だちが忙しい合間を縫って、1冊(実際は2巻組)の本を紹介してくれたのは、今年の初め。そこには、まさに私が知りたいと願っていたことが、隈無く調べて書かれていました。

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30年前に書かれたその本は、一般流通しておらず、アスティの限られた人の元へ届けられたものだと分かりました。記録用にと、図書館には「閉架図書」として保存され、改装工事前の図書館でなんとか2巻に目を通して、夏を迎えました。

発行元の商工会議所に、その本は残っていないといいます。私の知り合いで確かにこの本を所有しているのは、この本を紹介してくれた友だちだけですが、忙しい彼を呼び止められないまま、図書館の移転再開は決まらず・・ 11月を迎えました。

著者は、ソルボンヌ・ヌーヴェル パリ第3大学の教授であり、アスティ周辺の「ぶどう栽培環境」についてイタリア語で書かれた500ページにわたるものです。

まず、「閉架図書」であったこの本との出会いは、友だちの紹介が無ければ知る由もなかったでしょう。なぜなら、私はまだワイン業界の者でもなんでもない、アスティ郊外のぶどう畑広がる丘の愛好家に過ぎないからです。

しかし「好き」も高じると、それを更に高める強さが生まれ、周囲を惹きつけ、追い風が吹くことに気付きました。

なにより、この本との出会いを生んでくれた、この大好きな友だちとの出会いがすべての始まり。この土地に根差して生きる彼ら家族との出会いもまた、偶然にも強く引き寄せられたこの地との出会いから。

・・・

この本について探し、調べまわり、まさにこの本の訓えに導かれた、まさに今年。この教授が、30年ぶりにアスティで講演会を開くと言います。
この大事な大事な情報は、ふだんから目にしている新聞のアスティ県版から得たものですが、この記事との出会いもアスティでの私の日常が引き寄せた「必然」のような、Selendipita' (selendipity)!

幸いにも、一般公開されたこの講演会。会場は、友だちも勤めていたワイン醸造学研究試験場。ぶどう栽培・ワイン醸造の盛んなイタリアにおいても重要な位置を占めるアスティに、1872年に置かれた機関です。

この地に受け入れてもらって間もなく、友だちに連れて来てもらった日以来の訪問です。
あの日・・「待っていなさい」と、所用でパソコンに向かう友だちを待ちながら、目の前の机にあった雑誌に手を伸ばしました。そこには友だちの論文があり、あまりに面白く、手放すのを惜しそうにしていた私に気付いた友だちは、「持って帰っていいよ、つづきは家で読みなさい」と借してくれたのです。これがまさに私の人生を「彼のぶどう畑へと向かわせる」大きな後押しとなったのです。寝ても覚めても、何度も読むほど夢中になって、何か月もの間ベッドで一緒に眠るほどでした。

アスティの重要人物のあいさつがつづくなか、私は友だちの到着を待っていました。約束はしていませんでしたが、ここに来るだろうと思えてならなかったからです。教授とその著書の紹介の段になり、司会者は「えー・・ この本を語るのに、欠かせない彼の姿がまだ見えないようですが・・」と、彼の到着を待つ人は他にも多くいたのです。

教授の流暢なイタリア語での講演。それが分かるのには、ひとつにイタリア語を熱心に勉強してきたことがあります。また、アスティでの日常生活や、ぶどう畑、土地の人々との会話、観光事業の講座を通して、さまざまな土地のことを理解してきたことが大変役立ちました。

そんなことを思いながら熱心にメモを取り、また振り返ると、うれしそうに講演を聴く、友だちの姿が見えました。いや、実際には、人垣の間から顔をのぞかせていたのです。

おそらく、この講演会の主賓のひとりとも言える友だちですが、決して自分から前へ前へ・・ と言うタイプではありません。古い友人との再会を、うれしそうに遠くから見守って、聴き入っているのでした。

じゃましたら悪いな・・と言う思いと、忙しい友だちですから、途中で帰ってしまうかもしれない! そんな思いもあって、席を立って彼の元に駆け寄ります。

「まさえも来てたのか!」 ・・ そう言って、喜ぶ友だち。「だって、とってもおもしろいんだもん!」「そうだろう、すばらしい人だよ!」まだ講演は始まったばかり。「またあとでね!」と席に戻りました。

「観光事業とは、さて、いったい何なのでしょう? ・・ 観光事業とは、家に持って帰れないものです。 ・・ つまりは、人がここにやって来なければ楽しむことのできないもの、どこかに持ってはいけない土地の素晴らしさを、この地に訪ねてもらって楽しんでもらうことなのです」

当たり前のことを、ことばにしてもらうことで、とても心がすっきりしました。それだけではありません、涙が出るほどです。

言い換えれば、「まさえは、なぜ当てもないのにアスティに残って踏ん張っているのか? なぜ10年前に初めて訪ねてひと目ぼれしたこの土地を、今も寝ても覚めても想っているのか? それは、アスティの土地の良さを、この地を訪ねてもらってみんなに知ってもらいたいから!この地で土地の人と共に、旅行者を受け入れて行きたいから!」

ねぇ、そうでしょう!

講演中、教授は何度か「コスティリオーレ・ド・アスティ」の地名を挙げました。アスティ県内108ある市町村のなかから、なせ「コスティリオーレ」だったのでしょう?気に留める人はいなかったかもしれませんが、それは、執筆をサポートした私の友だちの暮らす場所。

あそこからの風景を、教授は思い浮べたのでしょう。
友だちの家の暮らしを、むかしながらの「ぶどう栽培農家の暮らし」を知りたいと願う私に、真っ先に教授の著書を進めてくれた、友だちです。

講演の後、人の波をゆっくりと逆行し、教授の元へ向かう友だちの姿がありました。一方教授は写真撮影やインタビューに囲まれ、少し時間が掛かりそうでした。

「とっても良い講演だったね!」と、友だちに声を掛け、しばらくおしゃべり。

それから教授とようやく再開できた友だちが、うれしそうに話す姿を見て、私もとても嬉しくなりました。

勇気を出して、地元の新聞カメラマンに撮影をお願いしました。いつも「タヤリン!」と町で声を掛けてくれる、カメラマンさんです。

教授と友だちは、ちょっとびっくりしたかもしれないけれど、終始うれしそうな、友だちの笑顔。今夜アスティで訪れた再会と出会いに感謝!

「あなたはワイン関係の人なの?」との教授からの質問に、「いいえ、アスティの丘が好きで、彼(友だち)のぶどう畑をよく訪ねているんです!」そう素直に答えると、教授の表情がパッと明るくなりました。

さぁ、ますますアスティがおもしろくなってきました! GRAZIE MILLE !!!

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by lavitaelevitiasti | 2014-11-24 21:53 | 土地柄・人柄  

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